あめゆきをとって

仮題と下書き

犬と虫のこと

玄関に留まりし虫も亡き犬の 輪廻と思う飼い主悲し

 

この歌を詠んだのは昨年の7月。はてな題詠「短歌の目」7月のお題「虫」の時でした。

昨年初夏に知人のYさんが飼い犬を亡くした、その直後のエピソードから詠んだものでした。

 

Yさんとはドッグスポーツを介して知り合いました。

我が家と同じ犬種のパピヨンで3頭飼いなのも同じという事で、向こうから話しかけてくれたのです。

うちはドッグスポーツを始めたばかりの新参者、Yさんの犬は競技の女王的存在でした。

でも、その後私が精神的不調をきたし犬関係の行事参加が出来なくなったのと、Yさんの引っ越しもあり、お会いする事はなくなりました。

あまり更新のないお互いのブログで、時々コメントを交わす程度の間柄でした。

 

我が家のぞんざいな犬の飼い方に対して、知り合ったパピヨンの飼い主さん達は皆、犬を宝のように大事に育てている感がありましたが、Y夫妻もそうでした。

Yさんの一番上の犬には持病があって、その健康管理を一所懸命されていました。その甲斐あって、犬としては長寿の16歳を過ぎても3頭飼いの楽しい日々を過ごしていたのです。

ところが、持病がなくて元気だった犬がある日突然具合を悪くし、病院で治療を受けている最中に亡くなりました。

原因不明の急死に、Y夫妻は深く悲しみます。

コメント欄は閉じられ、住所も知らないのでお悔やみも出来ませんでした。

 

犬が亡くなった数日後、Y夫妻は自宅の庭で3度、同じ蝶を目にします。

ふたりの側まで飛んで来たり、家の中に入りたそうにして玄関にじっと留まっている蝶を、Y夫妻は死んだ犬が帰ってきたと信じるのでした。

その蝶が今までに見た事もない蝶で、特徴のある模様なのが印象的だったようです。

私は、生き物が死ぬと何かに魂が移り替わって会いたい人の元へ行くというのは、ファンタジーだと思ったのです。

だから、Y夫妻がその蝶を犬だと信じているのは、辛いものがありました。

お題の「虫」と聞いてスラスラっと、あの歌は浮かびました。

Yさんに、そして亡くなった犬K君に捧げたいと思いましたがコメント欄は閉じられたままなので、未だに叶いません。

 

 

Lが突然死んで、お葬式をして、辛いとか悲しいとかを通り越してやり所のない気持ちを私は毎日ブログに綴りました。

誰かに読んでもらいたいというのではなく、やりきれない淋しさを吐き出さずにいられなかったのです。

犬を飼って10年間、楽しい事がたくさんあったはずなのに、それを全て掻き消してしまったLの死。

初めのうちは大泣きしながら、終わりの頃には少しは冷静に、毎日毎日パソコンに向かっていました。

Lの事ならいくらでも書き続けられそうでしたが、気が済んでもう止めようと思ったある日の事です。

 

キーボードの前を、とても小さなアリが歩いていました。

私は虫が大嫌いなので「わぁ嫌だ」と払いのけて殺してしまいました。

でも、その後すぐにハッとしたのです。

 

どうして?どうしてアリなんかが入ってきたのだろう?

まだ真冬で窓も閉め切ったままだし、これまで家にアリがいた事もないし…

 

もしかしたら、Lだったのかも…

 

うちにはパソコンが6つもあって、私が使うのはいつも決まっていました。朝起きるとお昼までそのパソコンの前に座りっぱなしになるのを、Lは知っているのです。

そう思うとアリは、本当にLだったような気がしてなりませんでした。

どうしよう。私はまたLを死なせてしまった。

 

蝶を見て、愛犬が来たと泣き叫んだYさんの気持ちと、その時の私は同じだったと思います。

 

アリの話を娘と夫に話すと「とうとう頭がおかしくなったか」と、ふたりから言われました。

確かにね。でもね?と続けても「はいはい。Lだね。Lが来たんだね~」と、相手にはしてもらえないのでした。

 

それからまたひと月ほど経って、犬2匹を連れて車で遠出しようとした時の事です。

出発してすぐに、後部座席にいた私は小さな黒いクモを見つけ大騒ぎをしました。娘も嫌がって「早く!早く殺して!」と騒ぎます。

犬がもし見つけてしまったらそれこそ車内で大暴れするので、急いで始末しなければなりません。

でも、いくら小さくてもクモは怖くてティッシュを丸めて仕留めようとしましたが失敗でした。

死んだかどうか解らないまま、まだ車のどこかにいるのです。

そこでまた、ハッと気が付きました。

「Lちゃんだよ!自分も一緒に連れて行って欲しくて、クモになっちゃったんだきっと。」

 

夫も「そうかもな。せめて、窓から外に出してあげたらよかったのに」と言い

娘には「あーあLちゃん可哀そうに。母ちゃんに2度も潰されて」と責められました。

 

Lが死んで2か月過ぎても、Lロスの私です。

Lがいない今年のお花見は辛かった…

 

4年前のL。目黒川で 

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パピヨン(Papillon)は、耳が蝶の羽を広げている形に見えることから由来しています。 

ちなみにYさんが犬だと思っていた蝶は、調べてみたら蝶ではなく「ホタルガ」という蛾だったそうです。

画像を見たら、うわーこりゃ無理だと思ったキモチワルイ虫でした。

 

Lや。

何かに移り替わって私の所に来るのなら、どうか虫はやめてくれ…