あめゆきをとって

仮題と下書き

朝の方言詩⑯

桐の板(いだ)ッコ

 

おらが家(えー)のオトゥは
カミナリおやず

ワラスの事(ごど)なんか
おらー知(す)らねー
が 口癖で
尋常小学校しか出てねぇども
まるーで 物知りだった

解らない事を
オッカァさ 聞けば
オッカァは 必ず
「オトゥさ 聞げー」
って言うの

だがら オトゥさ 聞けば
「そんなー事(ごど)も
解んねえってが
コバガでねぇが」

って 怒(おご)られるの
だっけーに オトゥさ聞ぐの 
まるーで嫌(や)んたがったども
オッカァは 
いっつも
「オトゥさ 聞げー」

だった

 

ある日 オッカァさ

「学校で 板(いだ)ッコ

使うから 買ってけで」
って 喋ったっけーば
「オトゥさ 頼めー」

渋々 オトゥさ頼んだっけーば
「板(いだ)なんか 山さ行って 拾ってこう!」
だぁど

だども オトゥは 
いづの間にか 居んなぐなって
帰(けぇ)って来たっけば 
板(いだ)ッコ 一枚 おらさ寄ごしたった
それは まるーで
軽こくて白い 板(いだ)ッコだった

そして 次の日
板(いだ)ッコで工作

板が堅(かで)ー
まるーで堅(かで)ー

って
みんなが 難儀してだった
だども おらの板(いだ)ッコは
柔こくて 
糸ノコで
すいすいど 切れだった
彫刻刀でも
さくさくど 彫れだった
みんな まるーで たまげでだった

「おお!タネ子ちゃんは 
いい板(いだ)ッコ 持ってきたなぁ!
これは桐の 板(いだ)ッコだぁ!」
って

先生も まるーで たまげでだった 

 

おらが家(えー)のオトゥは
カミナリおやず

ワラスの事(ごど)なんか
おらー知(す)らねー
が 口癖で
おらも
オトゥなんか知(す)らねーって 
ずーっと 思ってだった
オトゥには
愛されでねぇど
ずーっと 思ってだった
だども オトゥは 
オトゥなりに ワラスさ 
何が かにがして 
けったがったんだなぁ

そう思うように なったぁのは
つい 最近の事(ごど)
あの時 

「桐の板(いだ)ッコ
おおきにねぇ」
って 
オトゥさ 喋(さべ)ってねぇがなぁ
ちゃんと 喋(さべ)れば良がったなぁ
って

思うように なったぁのも
つい 最近の事(ごど) 

なぁのす

 

 

 

桐の板ッコ/ひと粒の種

2024/12/30 IBC radio 朝の方言詩 (OA)