あめゆきをとって

仮題と下書き

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

遠い日、津波、ショートケーキ

昔、好きだったおやつを思い出してみる。 母は商売で忙しく、よそのお宅のような手作りおやつなどは、望むべくもなかった。 私達きょうだいは、10円玉を握りしめて駄菓子屋に走った。 駄菓子を買うのは楽しい。懐かしくて美味しい思い出のひとつだ。 しかし…

父が私にくれたもの

私の父は、父性とか私への愛情というものが果たしてあったのかどうか、疑うほどの人であった。 子供が喜ぶような場所に連れて行ったり、甘やかして何かを買い与えたりという事が極端に少なかったから、数少ないそれらを私は、全て覚えている。 母が弟の出産…

夜爪

子供の頃、夜に爪を切ると母に強く窘められた。「夜爪は親の死に目に会えない」と言うのだ。親の死に目に会えないのは親不孝だ。臨終の場面には居たい。子供心にそう思っていた。 しかし、爪を切りたくなるのは大抵夜だ。お風呂から出て眠るまでの間、ふと、…