お義母さん。
あなたへの手紙は、これが二通目ですね。
最初の手紙を書いたのは、もう三十年以上も前の事です。
元号が「平成」に変わって間もない、あの雪の日に
あなたは突然倒れ、帰らぬ人となりました。
通夜の晩、涙を拭いながら書いた手紙を、棺にそっと忍ばせたのです。
あの頃諍いが絶えなかった私達夫婦は、あなたに心配をかけてばかりいた、その謝罪の手紙でした。
そして、もしも私達に子が授からなければ、離婚する覚悟だとしたためました。
お義母さん。
あなたが神様にお願いしてくれたのでしょう?
*1
お義父さんは、待望の初孫を一目見て
「母さんに瓜ふたつだ。これはきっと、母さんの生まれ変わりだ」
と、狂喜乱舞しました。
そして、目を赤くして呟いたのです。
「母さんにも、見せたかったのう……」
赤ん坊の世話は想像以上に大変で、辛い日々でした。
慣れない育児に悪戦苦闘し、つまずく度に
(お義母さんが生きていてくれたなら……)
何度もそう思い、あなたの息子と共に涙したのですよ。
お義母さん。
あなたの知らない「平成」の時代が今、終わろうとしています。 *2
あなたによく似たまん丸顔の娘が、未だ私達の元にいるのです。
今度は娘の縁結びを、神様にお願いしてくれませんか?
そしてこれからもずっと、私達を見守って下さいね。
とても優しかった、お義母さんへ。
*1 一部省略
*2 2019年3月の応募作品