あめゆきをとって

仮題と下書き

雀とカラスと白鳥と

岩手にUターンして半年が過ぎた。
IBCラジオを聞いていたら、リスナーから白鳥のV字編隊の目撃情報が続々と届いていて、いいな、私も見てみたいなぁと言うと
朝か夕方、空を見れば飛んでいると姉は、事も無げに言う。
ほんまかいなと翌日、買い物の帰りに空を気にしながら自転車に乗っていたら
見事なV字が現れたのだった。
私は自転車を止めてそれを凝視した。
よく見ると一羽二羽、編隊を乱しがちな小さめの白鳥もいる。
頑張れ、頑張れ、どこまで行くのか解らないけれど、頑張れ‥
白鳥が遠く見えなくなるまで見送って、私は少し悲しくなった。
頑張らないといけないのは白鳥ではない。私なんかに言われなくても白鳥は頑張っているのだから。本当に頑張らないといけないのは、私の方だ。

ここは田舎で自然が多いからいろんな鳥がいて、愛らしい声で囀っている。
その名前を知りたいけれど鳥はじっとしていないので、なかなか調べる事が出来ない。
雀は毎朝煩いくらい鳴く。
雪の降り積もった朝、私は庇の下に米粒を少しだけ撒いた。
食べるものがないだろうと思ったからだ。
雀は目敏くそれを見つけたらしい。
米粒はいつの間にかきれいになくなっていた。
私は楽しくなって、三度ほど米粒を撒いた。
賑やかに囀っていた雀達が静かになると、あっという間にそれを食べるらしい。らしいというのは、見ていると寄っては来ないので、ドアを閉めて様子を伺うだけだからだ。
そして、回を重ねると雀の数も増えるから、あそこに行けば米が食えると噂でも広がったらしい。朝の囀りが非常に喧しくなったので、私はご近所から苦情が来る前に、餌付けを止めざるを得なかった。雪はもうすっかり融けて、雀は虫でも捕えて食べれば良いのだから。
でも、朝の囀りを聞くとつい、米を持って外に出たくなるのを我慢するのが大変である。


母が生前、独り居の頃、食べ残しを一羽のカラスにあげていて、カラスもそれを毎日食べに来ていたのを思い出す。
カラスなんて気味が悪くないのと聞くと、平気だと笑っていた。
フンを落としてご近所トラブルになるからと姉が止めさせ、それは確かに有り得る話なので、母は素直に従ったのだと思う。
あの頃の母は、退屈しのぎにそれをしていたのだと私は思っていた。
でも、そうではない。
心が通うはずもない野生の鳥であっても、空腹は可哀想。何か食べさせてあげたいと思うくらいに、寂しかったのだろう。
母も、私も。

今日見つけた鳥は、黒いネクタイをしていたから、ネットで調べる事が出来た。
四十雀

鳥は可愛い。