あめゆきをとって

仮題と下書き

朝の方言詩⑩

白鳥


むがーし むがし
オラ まるーで やせひんがりで
背も まるーで とぺんこで
学校では 
いるんだが いんねんだが
わがんねーよーな ワラスだった
外で遊ぶのも 好ぎでなくて
休み時間には 教室でひとり
絵っこ描いでだった
きかねえワラスに 悪口されて
泣ぎっつめ けーでばーりだった
そんなオラさ おっかぁは
いっつも こう さべってだった

悲しいときには 上を向げ
悔しいときには 空を見ろ

誰の歌ッコの歌詞だあべ
次の日も 学校で泣きたぐなって
言われだ通り 上を向いたども
涙は さっぱり止まんなくて
なーどもなんながったあ

大人になって
東京さ行って
泣きたぐなって 空ー見だーども
東京の空は スモッグでまるーで汚なくて
ますます泣きたぐなったったー

東京暮らしも ゆるぐながった
オラ 岩手さ帰って来た
40年ぶりの岩手の空 
キレイだなぁって 見上げでだっけば
いっぺぇ 白鳥が飛んで来たった

悲しいときには 上を向げ
悔しいときには 空を見ろ
白鳥も 頑張って 飛んでだぁが
おめさんも 負げねぇで 頑張っとがん
って
おっかぁの声が 聞こえだった
 

 

白鳥/ひと粒の種

2024/03/12 IBC radio 朝の方言詩 (OA)