歌集恵贈シリーズ第二弾です。
松木秀 第四歌集『色の濃い川』
この歌集も松木さんの「歌集差し上げます」というツイートに、手を挙げたら届きました。
ありがとうございます。
色の濃い川の水面を想起させる、美しい装幀の歌集です。
透明カバー付きな所とか、一頁の厚みが丁度良く、ああ、これはとても良い本だなあと思いました。
三首引きます。
ゴキブリも琥珀の中のゴキブリは一段上のすごいゴキブリ
まさかのG…G大嫌いです…好きな人はあまりいない。だからGを詠もうとは誰も思わない‥
そんな事はないのですね。
岩手の久慈で、ゴキブリ入りの琥珀を私も見たことがあって、ウワァーってなったのに歌にしなかった。琥珀の中のゴキブリはすごいゴキブリという視点が持てない私よりも、松木さんは何段も上のすごい歌人だ。
(ゴキブリの歌は他にもあって、ヒィッとなりました‥)
生きていていいのでしょうか答えずに北海道の葉桜しずか
生きていてもいいかと私ならば星に問うし歌にもしてきた。松木さんは、花が終わった桜に問いかける。どちらも答えてはくれないけれど。
生きていていいのでしょうか、どうしてもそういう思考が付き纏うのは、五月だからか。
ジャムパンを二つに割ってジャムの量多い半分あなたにあげる
優しくて甘い歌。けれども多い半分をひとにあげる事の出来る人はそういない。私にも出来ない。多い方が欲しい。これは優しくて甘い歌なのではなく、試されているのかも知れない。
✳︎✳︎✳︎ 番外編 ✳︎✳︎✳︎
私は新聞歌壇に自分の歌が掲載されたか否か、それしか関心がないのです。それでも常連メンバーのお名前は自然と覚えていきました。松木秀さんは、その中のお一人です。
2017年4月11日は、私が毎日歌壇に初掲載された記念日ですが、この日の伊藤欄の特選が松木秀さんでした。
「パン屋は非愛国的」と考えたひとはおそらく子規を知らない
私はこの歌を今日初めて読みました。そして、伊藤先生の選評がなければ、私はこの歌がさっぱり解らなかった。
評がなくても、歌を理解できるようにならなければ‥
自分の歌ばかりでなく、ひとの歌にも向き合おうと思わせてくれてありがとうございました。
私は昨年病に倒れ、意識が戻ったときは胸や腹にチューブが何本も刺さっており、酸素マスクをしていましたから何やら大ごとだと理解した後(生きていて良かったなあ。短歌が詠めるもの)と、思ったのでした。
松木さんだって、もっともっと詠めるはず。これからもずっと、歌と共に生きていくのですから。