あめゆきをとって

仮題と下書き

北山あさひ歌集『崖にて』感想文(のようなもの)

はじめに。

私は短歌を詠みますが、詠む勉強のために歌集を読む事を殆どしません。

私がひとの歌を読むのは主に新聞歌壇欄ですが、決めていることがあります。

それは、深く読み過ぎないよう、さらりと流し読みすること。

誰がどの選者にどんな歌を採ってもらったのか、気にならないと言えば嘘になる。

けれども極力意識しないよう気を付けています。ひとはひと我は我。

そんなひとりよがりの決め事はさて置いて。

SNSを眺めていると、Twitterの短歌クラスタは勉強熱心です。皆さん歌集の蔵書がたくさんある模様…

それに引き換え私は、家にある歌集ほんの数冊です。

折しもこの世はコロナ禍で、そうでなくても私は療養中で外出もままならず、一念発起して申し込んだ短歌イベントも中止や延期…

この状況、一体いつまで続くやら。ずっとこのままではアウトプット(投稿)も出来なくなりそう…

と、不安に思っていたところに、「歌集差し上げます」のツイートを見つけたのでした。しかもお二方から。

きっとこれは運命。インプットせよとの神の思し召し。

 

歌集は、私も作りたいのです。

一生に一度でいいから、作りたいのです。

いつか…等と言っていられない年齢ですし、持病の事もあるので、実現に向けてさっさと動きださなければなりません。

自分の歌集のイメージを具象化するために、私はもっと多くの歌集に触れるべきだと思いました。

歌人をあまり知らない私でも、北山あさひさんのお名前だけは知っていました。

それは、北山あさひさんが第七回現代短歌社賞受賞者だからです。

でも、お幾つくらいの方なのか、どちらにお住まいなのか、歌歴は‥

そういった事は何も知らないし、知る必要もないかもしれない。でも、栄えある賞に選ばれる作品とはどんなものなのか、私は知りたくなったのでした。

私は北山あさひ歌集を読みながら、北山あさひさんの輪郭をイメージします。

歌が実景なのか、虚構なのかも解らないままに。

 

 

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前置きが、長くなりました。

DMの短いやり取りだけで、歌集は直ぐに届きました。

北山あさひ 第一歌集「崖にて」

 

 

この美しい本が、ずっと真っ白でなければ嫌なので、手を洗い、少し読んでは涙ぐみ、また手洗いと顔洗い。

栞の紐と、表紙の模様がおんなじピンク系で、それがまた素敵などと思いながら、小休止。

そしてまさか震災詠が(それも何度でも)あるとは思わなかったので、不意打ちをくらって震災フラッシュバック。

 

大好きな歌はたくさんありますが、あまり引用するのもどうかと思うので、ほんの一部だけ引かせて下さい。

 

いちめんのたんぽぽ畑に呆けていたい結婚を一人でしたい

 

この歌集にはよく植物が出てくるのです。白樺とか合歓の木、桜、ヒヤシンスとか。中でもタンポポが出てくると、にこにこしてしまう。うんうん、私も呆けていたい。結婚を、一人でしたいのよ。

 

「北山さん医療資格ないんだ」と斜めに言われ「ねえよ」と思う

 

医療ではないけれど同じような体験があって、私は(おそらく北山さんも)曖昧に笑ってええとかはぁとか言うしかなかった。ねえよ!!!って言いたかった。

 

しわしわの崖の肌(はだえ)に陽がさせば昏き胸より剣うまれくる

 

この歌は歌集のタイトルでもあり、最も重要な歌に間違いなく、それなのに、ああそれなのに私は大馬鹿なので、この歌が解らないのでした。

誰か!

誰か居らぬか?

剣ってなに?

剣って何なの?