あめゆきをとって

仮題と下書き

朝方にみた夢の話

もう誰も住まなくなった宮古の実家は、借地に建てた家だから更地にしなければならず、解体前に自分の物を取りに来るようにと姉に言われる。

でも私は、取りに行くものなど何ひとつない。

あの家を出て40年も経つのだ。行けば懐かしくて持ち帰りたくなるがらくたの一つや二つはあるかも知れない。だが、このコロナ禍にわざわざがらくたを集めに行く事もないだろう。

全部全部、捨ててしまえばいい。無かったものと思えば惜しくない。

思い出しさえしなければいいのだから。

そう思っていたのに、なぜか私は実家に居て、姉と弟と三人で家の片付けをしている。

既に姉と弟が何度か片付けに入っているのだが、一軒家に溜まりに溜まったがらくたは簡単に片付くものではない。

業者のように物も見ずどんどん運び出せば早いのだろうが、着物の一枚一枚毎に「これはあの時に毋が着ていた…」等と話し込むから、永久に終わらない。

すると姉が、和箪笥の引き出しから奇妙なものを見つけた。「わあ、何だろうこれ」

白い半紙を小さな筒状に丸めたものが30個ほど。中に折り畳んだ紙幣が入っている。これまで私達が見た事のない形状のものだった。

それは母が作ったものに違いなかった。最初は孫やひ孫のお小遣いと思ったが、それにしては数が多過ぎる。いとこはとこの分もあるのだろうか。

あり得なくはない。母はいつもお金がないくせに、少しでもお金が入るとそれを誰かにあげたい人なのだった。

でもどうして半紙に?孫にあげるならば可愛いポチ袋を買って、それぞれにメッセージを書くだろう。

私達は片付けを中断し、あれこれと推測したが結局は解らない。

解らないけれど、これは母が複数の人に渡すつもりだったお金……

人がたくさん集まる時、母の、ほんの気持ちとして……

そうだ、父の葬式でたくさん人が集まったら、母は誰彼にこれを配りたかったのかも知れない。

わざわざ来てくれて、おおきにねえ、と言いながら。

お世話になったから、ぺんこだども、と言いながら。

僅かなお金もないくせに、あるふりこべぇりして……

 

 

 

これは、夢。

今朝みた夢の話。

母が、全部捨てるなと言いたくて私に見せた夢。

母が残して欲しいものは何だろう?お金である筈がない。(金などない)

だから私は、早く実家に帰らなければならない。

家が更地になる前に。

早くコロナワクチンを打って、私が捨てた、あの家に……